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先輩のフルートをバックに謎解きしたってこと
数日前。林の中。
先輩、山口さんと平松さんを痛めつけた後、ふたりを車でアジトへ運ぶため、自分と関係のある地下社会のメンバーを呼んだ。
王さんをはじめ、組織の人たちが来てふたりを車に乗せ、先輩たちも一緒に車でアジトに向かおうってした。
ぼく、ふたりを助けたかったから先輩のポケットに、
〈山口さんと平松さんをすぐ自首させなければ警察に通報する〉
ってメモを入れた。
先輩、メモを読み、あわてて自分ひとり戻ってきた。
先輩たちが、山口さんと平松さんを車に乗せる現場にぼくの姿なんてなかったから、どうやってポケットにメモを入れたかって聞いてるんだ。
それから今日、梅花高校に来たことだって、先輩から見たら不思議なんだって思う。
どうやって、先輩が梅花高校の生徒だって知ったのか?
ぼく、先輩の顔、正面から見つめた。
先輩もぼくのこと、じっと見てた。口元に冷たい笑み。
先輩の取り巻きの三人も同じ。
ぼく、一歩前に出た。
先輩のギラギラした目がかすかに左右に揺れた。
口元から笑みが消えた。
「おい!」
先輩が美柳さんに声かける。
美柳さんが、フルートのバッグを差し出す。
先輩ったらバッグ開け、フルートの頭部管、主管、足部管を組み合わせた。
フルートを手で弄んでる。
「日下君。どうしたの?早く話してみろよ」
先輩が声かける。
「サキさん!」
大澤さんがそっと近づく。
「フルート、ここじゃまずいです!」
先輩がうるさそうに首振る。
「大澤。お前頭いいけどサ」
不機嫌そうな口調。
「あたし、バカじゃねえからサ」
ぼくのこと見る。ギラギラした目から、すごく明るくて、すっごく暗い光がぼくの方に飛んだ。
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