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始まりの雨
したしたと雨が降り続く日だった。
1人屋上に寝転び空にてを伸ばす、届きそうな気がした。
ただ手のひらに落ちる雨粒の感触だけが伝わり力なくその手を握った。
ことわざのように切っても切っても切れないものじゃないが、手のひらに落ちた雨粒は物を掴む感触はなく力をいれた腕だけがただ空に伸びていた。
友実「なに感傷的になってんの」
藍「友実。ただ…なんとなくさ」
友実「変わらないよ、世界も現実も私達も」
寝転んだ私の上に身を乗り出す友人で雨が私を遮った。
友実が言った言葉が頭の中に残る「変わらない」その言葉がとっても濁って重かった。
友実「呼ばれてる。集合の放送鳴ってたでしょ?早くいかないと呼びに来た私までどやされる」
空に伸ばした手を掴まれて渋々起き上がる。
無感情の私とは対照的に彼女はいつも笑顔だ。
楽しくなくても、楽しそうに笑っている。
私にはそれがなんだか心地いいのだ。
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