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新しく出来た進学校、それが僕、中山功太の入学した高校だった。建物も植わっている桜も、まだ落ち着いていなくて、どこか浮いていた。僕の着ている新しいブレザーの制服も、どこかなじんでいない。
入学した僕らは、背の順にクラスごとにならんだ。僕は男子の一番前。160センチしかなかったから。そして女子の一番前が、深谷はるみだった。薄茶いろのサラッと したショートカット。色白で、150センチあるかないか。華奢でおとなしそうなきれいな子だった。要するに、二人ともちんまかったってことだ。
教室に入ってからも、その順で席が決められたので、僕と深谷はとなり同士になった。
僕には中学のときから一緒の佐久間学が同じクラスだったので、友達づくりに慌てることはなかったが、深谷は一人だったので、どのグループに入るか結構苦労していたみたいだ。
とにもかくにも、授業が始まった。ある日僕は消しゴムを忘れてきてしまった。佐久間に借りようにも時間がない。いきなり貸してというのもなんなので、ノートの切れはしに『元気か~?』と書いて渡した。察しのいい彼女は、
『なにか忘れたの?消しゴム?』
とにこにこしながら言った。僕がうんうんうなずくと、
『これあげる。わたしの予備』
と、イチゴの形をした消しゴムをよこした。あんまり消えなさそうだったけど、香りは良かった。
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