Tears of the moon 〜月の泪の夢語〜

1/3
95人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
もちろんのこと…あなたも、ご存知ではありましょう。 この地上には、それこそ、数えきれないほどに…美しいものが存在するということを。 けれども…ただの一目で、こころさえ奪われてしまうほどに…それほどまでに美しいものを、あなたははたして、目にしたことがおありでしょうか…? ひとつだけなら…ええ、ひとつだけならば…そのようなものを、私は知っています。 『月光珠』…。 いつの頃からか、そのような名が…それには与えられていたもののようです。 すなわち…天球にきらめく、あの満月のように…気高く美しい、一玉の宝珠…と。 ですが…その神秘なる美しさを…ああ、私はあなたに、どのようにお伝えすればよいのでしょう…! 地上のどんな宝石も及ばないほどの、その澄み渡ったかがやきを…。 永久に融けることのない氷のような、その冴え冴えとしたまばゆさを…。 どうしても、たとえが必要であるのなら…そう…。 『美の神ミューズが、持ち前の気まぐれをもって、この地上にひとつだけ、与え授けてくれたもののような』…とでも申し上げるほかには、この私には、言葉の述べることが叶わないのです…。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!