Tears of the moon 〜月の泪の夢語〜

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そして、この地上にある、いくつかの価値あるものが…まさしくそうであったように。 奇蹟のような、その美しさのゆえに…その宝珠…いえ、『月光珠』もまた、幾人もの手にわたり、幾つもの物語を生み出すこととなったのでした。 それを手にしたひとが居て…そして、手に入れられなかったひとが居たでしょう。 それを手に入れたがために、幸福になり得たひとが居て…また、それを手にしてしまったがために、不幸を得ていたひとも、また居たとも聞き及びます。 『月光珠』…。 はたしてそれとは、幸福のしるしであったのでしょうか? それとも、不運をもたらす、災いの象徴であったのでしょうか…? そのことは…そう、あなただけが、知ることが出来るのです。 それでは、これより…物語をはじめることに致しましょう。 あなたにおかれては、どうか、このままに…そのこころの耳を傾けていて頂きたいのです。 今まさに、この本を開いているあなただけに…『月光珠』は、伝えてくれることでしょう。 ささやかな吐息のような、いくつかの物語を…そう、言葉ではなく、音ではなく…その光のまたたきをもって…。 いえ、ご心配には及びません。 幾百幾千もの夜にわたり紡がれたとされる、あのシェヘラザード姫のそれに比べるのならば…それらとは、刹那のまぼろしのように、ささやかな物語たちでありますがゆえ。 え? 私が誰か…と? そのようにおたずねになるのですか…? そのことは…今はまだ、どうか、ご容赦を頂けますでしょうか?…? そして…そのようなことよりも…今はいざ、お出かけ下さいませ。 時間と空間とをさかのぼる、はるかな旅への入口は…あなたの目の前に、すでに開かれているのですから…♪
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