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夜の天球に光りかがやく、神秘のまぼろしのような月。
神のきまぐれのために…それが地上にまで、転がり落ちていたもののような…。
たとえるならば…そのようなものとして、それはそこに在ったのでした。
あるいは…気づいてくれる誰かを、その手に拾い上げてくれるだれかを…ひたすらに待ちわびるもののように。
無人の広場に取り残された泉のように…どこかはかなく、そして、さびしげに…。
昼となく夜となく、そして、いつ果てるとも知れないままに…激しい戦いは、またも繰り返されたのでした。
隣同士である、コーサラ国とマガダ国。
その二国とは、もともとは、手紙を交わし合い、使者を送り合い、また、時には贈り物を送り合ったりするような…親しい間柄であったのです。
しかし。
戦いは、突然に始まっていたのでした。
二国の領地の境を、どのように設けるか…?との会議の席上での、国王同士のいさかいが…その引金でした。
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