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第四章
「ごめんね……」
研究室を去ることを告げにきた時、彼女は私に謝った。
「どうしても父の無念を晴らしたくて、でも、一人じゃできる気がしなくて、それであんなことを言って、私の復讐にあなたを巻き込んでしまった。父が死んだ時にこの研究から手を引いていれば、あなたにはきっと今頃、もっと良い人生があったはずなのに」
私は首を左右に振った。
「私は自分のやってきたことが復讐だとは思っていないし、巻き込まれたつもりも無いよ。私は先生の理論を否定した人達を悔しがらせたいわけじゃなく、ただ先生が正しかったことを証明したいだけだし、君に何も言われなかったとしても、そうするつもりだった」
私は本心からそう言ったのだが、既に物事を前向きに捉えることが難しい精神状態になっていた彼女は、そうとは信じてくれなかった。
彼女は、私が彼女を慰めるためにそのような言葉を口にしたのだと考えたようだった。
「私はもう、ここには来ない。だからあなたも、もう自由になって。私からも、父からも。今さらこんなこと言うなんて勝手すぎるって自分でも分かってるけど、もうこれ以上、あなたの人生を無駄にしないで」
そして彼女はその言葉通り、翌日から研究室に来なくなった。
それでも私は、タイムマシンの開発を続けた。元々、たとえ一人になったとしてもそうするつもりだったのだ。
これ以上人生を無駄にしないでと、彼女はそう言った。
しかし私は、自分のやっていることも、やってきたことも、無駄だとは思っていなかった。
それに、すっかり気鬱になっていた彼女にはそうとは思えなかったのかもしれないが、彼女が去る直前の時点で既に、タイムマシンは完成まであと一歩のところまできていたのだ。
そして私は、ついにそれを完成させた。
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