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『今でこそ夜空は星たちと月に照らされて明るいのですが、当時は真っ暗だったんです。
ふふっ。何ででしょう?
答えは簡単ですよね。その時よりもずっとずっと強く星たちが輝くようになったからです。
もちろん、月も。
夜空は「星の海」とか「星の草原」などと言う方がいらっしゃいます。
私たちの世界では「星の鏡」と言います。
空は地上を写す鏡。地上は空を写す鏡。
空に輝く星と同じ数だけ、この地上には出会ったことのない誰かがいる。
初めて夜空を見たとき、そう感じたのです。
あの日から私は頻繁に空を見上げるようになりました。
誰かが新たに生まれたときも。
誰かが目の前で死んでいったときも。
知っていますか? 空の星たちの位置は変わらないようでいて常に変わっているのですよ。
まるで私たちが運命の人を、新たな出逢いを求めるかのように自ら移動するのです。
そして、季節や時間に関わらず変わらないものもあります。
星座です。星座は互いの繋がり。絆なのです。一度結んだ星座は星が欠けるまで形を崩すことはなく、共に在り続けます。
私たちが結んだ絆も、ほら。
あのように形を成しています。
あの日以来、失うことへの恐怖が消えたわけではありません。
ですが、前に進む勇気を得ることが出来たのだと私は思っています。
天にある星は動く。
ならば、地上にある私が動かなければ、きっとまたあの時のように時間は止まってしまうのです。
これが私の。「僕」の始まりのエピソードです。
止まっていた時間が動き出した、始まりの冒険。今でもあの塔へは度々訪れます。
その度にこの時の流星群を思い出すのです。
消えてしまった星ももちろんあります。いつか必ず私の星も消えます。
ですが。それまでは他の星と共に輝き続けたいのです。
あなたと一緒に、空で、地上で。
この不思議で不思議で、不思議に溢れたこの世界で、輝き続けたいと願うのです。
これで空が動くエピソード『天動説』は終了でございます。』
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