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社長もいないし、心が通じ合った2人を早く2人きりにしてあげたくて5時になるとすぐに敦美は椅子から立ち上がった。
「お疲れ様です」
「あ、待って。斎藤さん」
向かい側に座る昌子に声をかけられていた。
「はい」
「ありがとう。貴方にきちんとお礼を言いたかったの」
「いえ、副社長から長い片思いの話を聞いて力になりたくて」
「私ね、勘違いしてたのよ。副社長が好きな人は斎藤さんだって」
「え、どうして?」
「いつも副社長は、斎藤さんに初めに聞くし。斎藤さんには笑顔なのに。私には、どこか不自然な態度だったから」
「それは、副社長が不器用だからですよ。何にも思ってない私には自然に振る舞えるけど、大好きな杉谷さんには、緊張でぎこちなくなってしまったからですよ」
「うん。今日、副社長から告白されて…ようやく私は嫌われていたんじゃなかったんだって気がついたの」
「告白…されたんですね」
「そう。凄く胸に響いた告白だったわ」
「……そうですかぁ」
副社長がなんて告白したかは、聞かないでおこう。2人だけの思い出にすべきことだから。
「私も副社長がずっと好きだったから余計に嬉しくて泣いちゃった」
「え、杉谷さんも副社長をずっと好きだったんですか?」
ーーー驚いた。2人はずっと両思いだったんだぁ。
「でも、その涙は更年期の汗ってことになっちゃったけどね、ふふふ」
本当に副社長は、トンチンカンで鈍い男だ。
ーーー全く杉谷さんの気持ちに気がつかないなんて。私も気がつかなかったから、同類だけど。
「杉谷さん、あの…よかったですね」
「ありがとう」
こんなに、にっこり笑う昌子を初めて見た。
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