不器用な想いは誤解されがち

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どうすることも出来ずに昌子と敦美は、可愛らしいメルヘンチックな店に入っていた。 板張りの床、丸いテーブルにかけられたブルーのギンガムチェックのテーブルクロス。 テーブルの真ん中に置かれた小さな絵本を手にしてパラッとめくってみた。 「わぁ、可愛い。けど英語なんで内容はわかりませんね。ふふふっ」 敦美のしらじらしい笑いに昌子は苦笑した。 「こんなお店に入るのは、初めてで落ち着かないわ」 「はい、杉谷さんと2人で外に出るのは初めてですから、私も緊張してます」 絵本をテーブルに置いて、店内を眺めた。 30を超えた女2人でランチをするには気恥ずかしい雰囲気の店ではある。隣の誰もいないテーブルには、何故か椅子にぬいぐるみが客のように我が物顔で座っていた。そのぬいぐるみの無表情な横顔を眺めていると昌子が話してきた。 「びっくりさせてごめんなさいね」 「え?」 「辞めるとか言って」 「はぁ、あの、考え直す訳にはいかないんですか?」 「……そうね。たぶん、限界かしら」 「限界…仕事がですか?」 「まあ、そんなところね」 顔を歪めるようにした昌子。 「お待たせ致しました」 ランチの『風の香りがするかくれんぼオムライスセット』と『お花畑のカレーライスセット』が運ばれてきた。 丸いパンの真ん中に横に切れ目が入っており、上の部分のパンを持ち上げてみると、中にうさぎを形どったハムが入っていた。 ーーーこれが、かくれんぼって意味かな? そんなことを考えいた敦美に、昌子が言った。 「今頃、副社長は斎藤さんのお弁当を食べているのかしらね」 「はぁ」 思惑が外れて、副社長は凹んでいるだろう。 「きっと、うれしいでしょうね」 「いえ、どうでしょう? 大したおかずが入ってなかったと思いますから…」 ーーー副社長は、私のお弁当で足りるだろうか?体が大きいから、おそらく足りないかもしれない。帰りに何かおにぎりでも買って戻った方がいいかなぁ。
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