不器用な想いは誤解されがち

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「そんなことないわよ。斎藤さんのお弁当だもの」 「え? 私のお弁当ですが…それで副社長が喜ぶ訳ないですよ」 ーーー杉谷さんの手づくり弁当なら、副社長は凄く喜んだだろうけど。 「喜ぶわよ。きっと」 「喜ばないですよ。好きな人が作ったお弁当ならいざ知らず…」 ーーー本当なら副社長と杉谷さんを2人きりにしてあげたかったのに。私の考え方が甘すぎたみたいね。 思わず溜息をついた時、不意に昌子が笑った。 「ふふっ、好きな人かあ。斎藤さん、あなた良く鈍感って言われたりしない?」 「えっ…はあ、たまにありますが」 「副社長は、そんなところも好きなのかもね」 「え?副社長が好きって…え?一体なんの話ですか?」 昌子は、意味ありげに微笑んでみせた。 「なんでもないわ。食べましょ」 「えっと…はい…」 ーーー気のせいかな?杉谷さんったら、なんか変。 スプーンを掴んで敦美は、昌子を盗み見た。 カレーの上に並んだお花の形に切られた人参をスプーンですくって口に運ぶ昌子。 ーーーあっ、人参。 急に思い出していた。 『いつになったら食べられるんだろうな、この人参』と言っていた有人の顔を。 ーーーアルくん、今頃どうしてるかなぁ。 まるで遠くに行ってしまった人を思い出すみたいに敦美は有人を思っていた。
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