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昼休み後に洗った弁当箱を返してきた隆二を二階へ連れて行った敦美は
「副社長、運転出来ますよね?」と聞いていた。
「何? 出来るよ。どこかに急ぎの納品あったっけ?」
「車はありますか?」
「車は家のならあるよ」
「それでいいので、杉谷さんを明日でもドライブに誘ってくださいよ」
ランチの時に敦美は昌子から『ドライブ好き』という情報をゲットしていたのだ。それを聞いた時、敦美は閃いていた。今度こそうまくいきそうな使える情報だと。
「明日?急にドライブ? なんだか凄く急じゃないか?」
「仕方ないじゃないですか。時間がないんですから。 杉谷さんがやめちゃったら、副社長はどうするつもりなんですか?もう、2度と杉谷さんに会えなくなっちゃうんですよ?それでもいいんですか?」
「それは困るよ」
即答だった。
「それなら、絶対に急ぐべきですよ。ほら、早く杉谷さんを誘ってきて下さい」
「でもさ、そんな簡単にはいかないと思うけどな」
隆二のネガティヴな言葉には、呆れてくる。
「簡単にいくなら、今頃はもう少しマシな状態になってますよ。違いますか?」
「まあ、そうだよね」
「なら、さっさと行ってきて下さい」
敦美は右腕を伸ばし、人差し指で扉を指差した。
「今?」
「今でしょ」
「…今のは、あっちゃん……少しばかり古くないか?」
黙って流してくれればいいものを隆二にかなり前に流行った言葉を指摘され、凄く恥ずかしくなってきた。
ーーー真似したわけじゃないのに。
「い、いーから行ってきて下さいよ」
敦美は、少し赤くなりながら隆二の背中を押していた。
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