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心から幸せそうな笑みだった。
それを見て、凄く羨ましいと感じた。
ーーー長年の想いかぁ。
また、有人の顔が頭に浮かんできた。
ーーー本当にアルくんが、長く私を想っていてくれたとしたら?
錆びついた扉が音を立てて開いた。
ーーーこの扉みたいに私は、錆びついている。こんななのにアルくんの想いには答えられないに決まってる。歳がちがう。前途洋々な若者としがない会社員。キラキラした世界が広がるアルくんに錆びついた私は似合わない。不釣り合いだ。それこそ、身の程知らずだ。私には私の身の丈にあった相手がきっといるはずだ。
駅へ向かう見慣れた細い道。
1人で歩きながら、自由ヶ丘駅前のロータリーに出た。
ごちゃついた人混みの中に身を投じる。駅へ行く人波に流されていくように歩く。
これが私のいつもの日常。これからも変わらない毎日だ。
「…さん! 待って」
不意に後ろから手を掴まれて立ち止まる。
ゆっくり振り向いて、手を掴んできた人を見上げる。
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