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歳を重ねることは、生きてさえいれば誰でも可能な人生のシステムだ。
努力しようがしまいが、そんなことは関係ない。時が経つと人間は自然に誰でも歳をとる。
自由が丘駅に到着してドアが開くのを待ち、敦美は電車から降りた。少しホームを歩き、いつも使う下りのエスカレーターに足を乗せた。
8時40分という時間に、このエスカレーターを使う人はすごく少ない。逆に反対側の上りエスカレーターは、隙間が無いくらいに人で混み合っている。
敦美は、ゆったりとエスカレーターに乗り、正面口の改札から駅の外へ出た。
「おはようございます。無料体験教室をやっております」の掛け声と共に黄色のポケットティッシュが敦美の前に差し出された。
軽く花粉症の敦美は、ポケットティッシュであれば大抵受け取ることに決めている。
この時もポケットティッシュだと見分けられたので、手を伸ばした。
ところが敦美の手に渡されるはずのポケットティッシュは引っ込んでしまった。
代わりに敦美の出した手は若いティッシュ配りの男に握られていた。
「何!」
驚いて振り払うように手を引っ込め敦美は、ティッシュ配りの男をかまえるようにして見た。
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