758人が本棚に入れています
本棚に追加
ベッドに腰掛け足を組んだ美月。
「話が合うと思うかって、相手が聞きたかったとするよ?」
偉そうな先生に注意されている生徒のように、立たされた状態の敦美は頷く。
「うん」
「例えばよ、『俺と話が合うと思う?』って男が聞いて『合うと思う』って女が答えたとするでしょ?」
「うん」
「必然的に『俺たち気が合いますね』ってことになるでしょ?」
「う、うん」
敦美は、ごくりと唾を飲み込む。
「なら『俺たち付き合いますか?』ってことになるよ」
わざとゆっくり話す美月。
「うそっ、えー!まさか」
わざとじゃないのに、わざとらしいくらいに敦美はビックリしていた。
「逆によ、面会する方の『会う』って意味の場合は、簡単。『俺に会いたい?』『会いたくなったんじゃない?』っていう、ちょっとナルシストっぽい男の口説き文句でしょう」
「う、うそっ」
敦美は、両手で口を押さえる。
「大丈夫よ。慌てないで。こんな時は…」
スマホ画面を勝手にタップし、文字を入力する美月。
「美月、やめてよ!勝手に!」
敦美は美月の横に座りスマホを取ろうと必死になる。
もみ合いベッドに倒れこみ、2人で敦美のスマホを奪い合う。
ようやく、スマホを取り替えしたあと、
「うわっ!」っと声を上げた敦美。
「ん?」
「送っちゃってるじゃない!!」
「だって、敦美ちゃんが押したからさ〜仕方ないじゃん」
ベッドに起き上がった美月は、ニヤッと笑う。
「さて、私は先にリンゴ食べとくね〜」
ベッドから降りる美月。
「美月!!」
美月を捕まえようと手を伸ばしたが、いつも通りに、すばしこい美月には逃げられてしまった。
ーーーもうっ! 美月ってば勝手にぃ。
ベッドの上に正座をした敦美は、スマホを持ったまま頭を抱えた。
最初のコメントを投稿しよう!