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リンゴを奥歯で噛み砕きながら、美月は目の前に出されたスマホを見つめた。
「良かったじゃん」
「はぃ?」
「喜んでる。バンザイしてるよ」
たしかに有人のメッセージには、バンザイしているラッコがいた。
「そ、そうなんだけど。このあとの問題よ、返事どうすればいいかな?」
敦美は、美月に対してすがりつくような目をみせる。
「ん〜待つ」
「え?待つの?」
「うん、焦らなくてもいいって敦美ちゃん。向こうは、喜んでるんだから泳がせておけばいいって」
「泳がせるって、なんか魚みたい」
「そうよ、魚。例えばよ、このリンゴが魚だとするよ、喜んで泳いでる魚。この魚には、いつでもモリをさせる状況がぁ〜今」
皿に乗っているリンゴのひとつにフォークを刺す寸前で美月は手を止めた。
「敦美ちゃんは、いつでもモリをさせるの。残った問題は、タイミングと刺し方ね」
「刺し方って言っても…」
美月は、テーブルに置いたスマホの画面にバンザイしているラッコを眺める。
「このラッコ男をうま〜く泳がせて、タイミングを見計らって刺す。いーい、向こうからなんかリアクションがあるまで敦美ちゃんは、タイミングを待って。わかった?」
「でも、相手はアルくんだよ?」
敦美は、思わず美月の顔を見つめる。
「は? さっき話してた、あの斎藤くん?小学生の?」
美月は驚いたように敦美を見直した。美月も敦美がアルくんの家庭教師をしていたことは、当時から知っている。
「そりゃあ、前は小学生だったけど。今は、社会人で会社経営してるんだってば」
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