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敦美がゴミ袋を持ち会社の表へ周ると、昌子がホウキで会社の玄関付近を掃いていた。
綺麗好きな昌子のおかげで会社は、内も外も綺麗に保たれている。
「ゴミ袋持ってきました」
「ありがとう…」
何か言いたそうな昌子が敦美に顔を向けた。
「副社長…ムッとしてた?」
「いえいえ、副社長は温厚な人ですから全然。むしろ、残念そうにしてました」
「チリトリが出来なくて?」
「はい」
頷いた敦美。
昌子は、短く息を吐いて敦美を見た。
「ふぅ、あなたはどう思う?」
「え、何をですか?」
「会社の副社長がチリトリを持って掃除をやることよ」
「あ〜ここの副社長は、綺麗好きなんだなって思います」
「大会社の副社長だったら、チリトリ役なんかやらないわよね」
「大会社だったらそうかもしれませんね」
「だからよ。小さくても副社長は副社長なのよ。なのに、部下に媚びるみたいに『チリトリやろうか』なんて言ってほしくないの。もっと、どっしり構えているべきでしょう? 副社長なんだから」
かかんだ敦美がチリトリを地面につけ、ゴミを昌子がチリトリに掃いて入れる。
「はぁ」
「そうじゃないと、体裁が悪いじゃない。副社長がチリトリなんて」
「でも、うちの副社長の良い点は、チリトリをやりたがるような所ではないかと思いますが」
チリトリに入ったゴミをゴミ袋に入れる敦美。
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