冗談じゃなかった

2/21
746人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
敦美がゴミ袋を持ち会社の表へ周ると、昌子がホウキで会社の玄関付近を掃いていた。 綺麗好きな昌子のおかげで会社は、内も外も綺麗に保たれている。 「ゴミ袋持ってきました」 「ありがとう…」 何か言いたそうな昌子が敦美に顔を向けた。 「副社長…ムッとしてた?」 「いえいえ、副社長は温厚な人ですから全然。むしろ、残念そうにしてました」 「チリトリが出来なくて?」 「はい」 頷いた敦美。 昌子は、短く息を吐いて敦美を見た。 「ふぅ、あなたはどう思う?」 「え、何をですか?」 「会社の副社長がチリトリを持って掃除をやることよ」 「あ〜ここの副社長は、綺麗好きなんだなって思います」 「大会社の副社長だったら、チリトリ役なんかやらないわよね」 「大会社だったらそうかもしれませんね」 「だからよ。小さくても副社長は副社長なのよ。なのに、部下に媚びるみたいに『チリトリやろうか』なんて言ってほしくないの。もっと、どっしり構えているべきでしょう? 副社長なんだから」 かかんだ敦美がチリトリを地面につけ、ゴミを昌子がチリトリに掃いて入れる。 「はぁ」 「そうじゃないと、体裁が悪いじゃない。副社長がチリトリなんて」 「でも、うちの副社長の良い点は、チリトリをやりたがるような所ではないかと思いますが」 チリトリに入ったゴミをゴミ袋に入れる敦美。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!