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「あっ、うん。ごめんね、先生」
頭をかいてみせる有人。
ーーー素直なところは変わらないのね。だけど、本当に大きくなったな、びっくり。
顔の骨格だけでなく、体の大きさも男らしくなっている有人に突然出会い、敦美は少し戸惑っていた。
それから、敦美は思い出したように腕時計を見た。
「あっ!大変。行かないと!」
急いで歩き始めてから、有人を振り返って敦美は言った。
「ごめん、有人くん。今から仕事なの」
「そうだよね、わかった。突然引き止めてごめんね、敦美さん」
敦美に向けて、有人はニコニコ顔を見せ大きく手を振ってきた。
ーーー相変わらず可愛い笑顔だなぁ有人くん。
再び腕時計を見て走り出した敦美。
懐かしい人と偶然に再会したことが、敦美の表情をどこか明るくさせていた。
10数年変わり映えのない毎日だったが、敦美にとって今日はいつもと全く違う特別な朝になっていた。
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