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パソコン画面を見ていた昌子が、
「副社長、昨日お問い合わせいただいた法人のお客様なんですけど、メールが来てます」
と段ボールをデスクの上に置いた隆二に伝える。
『セイレン株式会社』は、監視カメラやHDDレコーダー製品、その他のセキュリティ製品の開発、販売、サポート業務を行う会社だ。
通販業務が会社の主軸になっており、昌子と敦美の仕事は、主に通販サイトを通じて客の応対をし、販売する品物を確保して梱包、納品する作業が主だ。
「あ〜どれ?」
昌子の隣に来て、昌子と一緒にパソコンの画面を覗く隆二。
メールの文を読もうとした隆二の顔が昌子の顔近くに寄った時、
「わわっ!」
昌子が慌てて椅子から飛び跳ねるように勢いよく立ち上がった。
「えぇっ、何、どうしたの? 昌子さん」
驚いた表情を見せる隆二。
「あっいえ…」
立ったまま昌子は敦美と緒方を気にしてチラチラ見ながら、椅子をデスクから離して腰を下ろした。
隆二は「そんなに避けなくても」と言い太い眉尻を下げマウスを自分で動かした。
昌子と隆二の様子を見た敦美と緒方はなんとなく一度視線を合わせたが何も見なかったように無言で視線を逸らした。
何事も無かったように、また水やりを再開し緒方は「我が子ながら、情け無い」そう言って首を左右に振った。
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