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「Buona sera、なかなか刺激的な歓迎をありがとう。地雷の信管は全て抜き取らせてもらったわ」
「一体どうやって、なんて聞いても教えちゃくれねぇんだろ? なかなかふざけた真似してくれるじゃねぇか。ぜひお名前を聞かせてほしいもんだな、signorina?」
そこには怪盗mがリビングのソファの背もたれ上に乗り、猫らしく手で顔をこすっていた。
どこから取り出したのか、既に新しい鼻眼鏡が装着されてある。八雲とロイは得も言えぬ緊張感と久々の高揚感に、僅かに武者震いをした。
「怪盗mよ。あなた方のパンツ、頂戴しに来たわ」
「よく見ればなかなかの美人じゃねぇか。ぜひ、本当の名前で呼ばせてくれないか?」
ゲテモノ相手に本気でナンパをしているロイに八雲は全力でドン引きした。しかしこれは恐らく作戦。相手が人間だろうが魑魅魍魎だろうが性別がメスならオスになりきれるロイに八雲は心の中で僅かに尊敬した。
「ふふ、近年稀に見るハイレベルなイケメンさんね」
「ロイ・エバンスだ」
「あなたのパンツ、頂戴できるなら名前を教えてあげてもいいけれど?」
「パンツなんざ必要ねぇ。その向こうを一緒に楽しむ……ってのはどうだ? もちろんベットの上で」
ロイはポケットからにゃおちゅーるを華麗に取り出すと、持ち前の流し目を炸裂させながら怪盗mの目の前でちらつかせた。
「ぎゃふっ……!」
カエルを踏みつぶしたような声を出した怪盗mは満更でもない様子で必死に鼻下をぬぐっている。漏れ出す何かを拭き取るので精一杯な様子だった。
一方の八雲は、その間も応酬されている甘美なやりとりに耳を塞ぎたい一心だった。ロイは交渉を続けながらも確実に怪盗mとの距離を詰めており、今や八雲はロイに対して尊敬の念しか抱いていない。
しかし人間同士なら何とか聞けたものの、これ以上ゲテモノと人間の18禁なやりとりを聞いていたら本気で頭がおかしくなりそうだった。
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