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(駄目だ、これ以上聞いていたら頭が……)
八雲は身体が発する強い拒否反応に思わず目を瞑るという、戦闘中あるまじき行動にでてしまう。
その瞬間、ザワリと八雲の皮膚に殺気が走った。
「馬鹿野郎! 気ぃ抜いてんじゃねぇ!!」
ロイの罵声でハッと我に帰った八雲の両眼には、怪盗mが鼻眼鏡を光らせ大きく跳ね上がる姿が捉えられていた。八雲の奥歯がギリっと音を立てる。
知らぬ間に目先数十センチのところまで距離を詰められていた八雲は大きく上半身を後ろへしならせた。そのままブリッジのように後ろで両手をつくと、目の前にいるであろう怪盗mに向かって右足を蹴り上げる。
ブン! と大きく空を切る音。
八雲は舌打ちすると、そのままバク転し2丁めのテーザー銃を構え跪いた。
しかし怪盗mが見当たらない。
「っ!!」
八雲は突如感じた股間に向かう殺気に、慌てて銃をパンツの目の前で構えた。しかし、目にも留まらぬ速さで足元をすくわれた八雲はバランスを崩して床に倒れてしまう。
パンツを奪われる!
そう直感した八雲は片手を軸に大きく足を開き、回し蹴りをしながら立ち上がった。
肩で大きく息をする。目の前のソファの背もたれには、つい先刻と同じように怪盗mが何事もなかったかのように座っていた。
首元の装備品はピンクのクマパンツのみ。八雲は自らのパンツの無事を知り安堵のため息をつく。しかし次の瞬間、下半身の妙な違和感に気づいてしまった。
確実に、ボクサーパンツが半分ずり落ちている。
「クソっ、何の感触もなかった……知らぬ間に手をかけられていたということか」
「残念、普通の人間ならあそこで奪えていたんだけれど。やっぱりあなた達は特別ね。燃えるわ」
八雲は怪盗mに聞こえるように舌打ちをすると、そそくさと半分ずり落ちたボクサーパンツを引き上げた。
ロイが隣で八雲を咎めるように睨みつける。
※ 実際の相馬八雲はこんなにチョロい暗殺者じゃありません
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