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「ふふ、じゃあ折角だしお近づきの印にご覧に入れて差し上げましょうか」
「なん、だと……?」
怪盗mは恭しく頭を下げると首から下げたピンクのクマパンツの隙間から白い布地をチラリと覗かせた。
「や……やめろ……」
「あら、もう少し出してほしいの?」
「やめろと言っている!」
「どうして? まだほんのり温かいわ」
「くっきっ……うぎぃっ……」
そんなもの、直視した時点で確実に俺の理性は死ぬ。
そう直感した八雲は激しく目をそらした。
それに小夏に不誠実なことは死んでもしたくない。同意の上でなければ意味がない。頭ではそう理解しているのに八雲の脳内の男の部分が悲しいかな、激しくそれに反応していた。
八雲の脳内では全面戦争が勃発していた。思考回路はショート寸前。今すぐ会いたいよどころではない。
怪盗mは八雲の激しく憔悴しきった表情を見て、目を光らせた。チャンスは今しかない、と。
怪盗mは八雲にチラつかせていたパンツを首から抜き取ると、八雲の顔面めがけて投げつけ大きく跳躍した。
ぽすん、と八雲の顔面に乗っかったパンツは小夏のものでも、ましてや女物でもなかった。これは怪盗mが用意したダミー。ただの真っ白もっさりブリーフだったのだ。
騙されたことに気づいた八雲がブリーフを床に叩きつけた瞬間、また足元がすくわれるような感覚に陥った。体が大きくバランスを崩す。
「くそっ!!」
次こそ奪われる。
八雲は今日初めて諦めに似た感情を覚えた。これも全て小夏のパンツに動揺した自分自身の不甲斐なさがもたらした結果。こんな、男の風上にも置けない糞野郎のパンツなんか守るに値しない。
八雲は手からサバイバルナイフをこぼすと、全てを諦めそっと目を閉じるのだった。
※ 実際の相馬八雲はこんなにチョロい暗殺者じゃありません
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