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「いいえ! お気になさらないでください。きっととても大切な用事なんだと思います」
「いや確実に、それも途轍もなくくだらない用事だと思う」
「そんなこと……あ! 1つ思い出しました! 猫さんの大好きなもの!」
「な、なんだ?」
小夏は頭の上にピコンとライトを光らせると、人差し指を立て笑顔で言い放った。
「にゃおちゅーるです!」
「……!!」
八雲はパッと一瞬だけ目を見開いたが、その後弾かれたように顔を伏せた。体の奥底から湧き上がる何かを押さえつけられなかった八雲は、遂に小さく肩を震わせ始める。
そして震える人差し指をなんとか立てると、顔を伏せたまま、まるで懇願するかのように呟いた。
「も、もう一回言って、くれるか……」
「はい! にゃおちゅーるです!」
ゴン!!
今度は隣にあった電柱に頭を打ち付けた。小夏は突然の出来事に悲鳴をあげる。慌てて駆け寄るが八雲はそっと手を突き出してそれを静止し、挨拶もそこそこにその場を後にしてしまった。
これ以上あの場にいたら、にゃおちゅーるとのたまう小夏の破壊的可愛さに我を失いそうだったからだ。
(早く事を済ませて旭に会いに行こう。もう10回……いや20回くらいは言わせても問題ないだろう)
問題大有りだ。
そんなことにも気づけないほど「にゃおちゅーるです!」の虜になってしまった八雲は、大型スーパーにて「にゃおちゅーる黒毛和牛味」を箱買いすると、そそくさと拠点とするアパートに帰還するのだった。
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