mission 0

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「なんっ……だこの、ゲテモノは」  アパートに帰るやいなや、メインモニターに映し出された『うさ耳と鼻眼鏡をつけた黒猫』らしき物体に八雲は口角を引きつらせた。  サブモニターには近隣の地図と赤丸、そして丁寧に真紅の封蝋が押されたミッドナイトブルーの封筒が映し出されている。  肩まで伸びるブロンドを1つに結い上げ仕事モードに移行していたロイ・エバンスは、デスクチェアをくるりと反転させるといかにもな表情で重々しく口を開いた。 「怪盗mだ」 「デスクワークのしすぎで頭でも沸いたか?ふざけるのも大概にしろ」 「ふざけてるかどうかは自分の目で確かめな」  ロイはデスクに置いてあった封筒を取ると、八雲に向かって投げてよこした。既に封蝋は砕けており開封済みであることがうかがえる。  八雲は訝しげに封筒を見回したあと、そっと中身を取り出した。 “予告状 本日、相馬八雲及びロイ・エバンスのパンツをいただきに参ります。 怪盗m ” 「今すぐ焼いて捨てろ」 「待て待て待て、本当なんだって」 「こんなくだらん茶番に付き合わされてたまるか。パンツだと? 欲しいならくれてやれ。同じものならごまんとある」 「お前は良くても俺は駄目だ! 見ろ! 俺の芸術的なパンツを! 一枚いくらしたと思ってる?!」  ロイはジーンズの中に手を突っ込むと、ご自慢のトランクスのウエストリブを掴み引き上げて八雲に見せた。  そこにはイタリア発の一流ラグジュアリーブランド、EMPORIO(エンポーリオ) ◯RMANI(◯ルマーニ)のロゴが施されている。 おしゃれな男はパンツも一流なのだ。
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