mission 0

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「予定時刻1分前だぞ。何の気配も感じない。お前の情報は本当に確かなのか」  部屋の照明は全て落とされ、柔らかい月の光だけが部屋をぼんやりと映し出している。  学ランを脱ぎ黒のボディスーツと防弾ジャケットに着替えた八雲はテーザー銃を片手にソファの裏から低く唸り声をあげた。  ソファの上で長いおみ足を組みあたりを伺っていたロイは小さく息を吐き口を開く。 「間違いない。怪盗ってぇのは予告状に忠実な生き物だ。気ぃ抜くなよ八雲。気がついたらノーパンだぞ」  その時だった。  薄氷にヒビが入るような音が部屋に小さく響く。ロイが慌てて立ち上がりソファを飛び越え八雲の隣に着地した。 「おいおい、マジかよ」  ロイは口角をひくつかせると、驚きと混乱が混在したような乾いた笑い声をあげた。  窓枠に装着された指向性地雷はいとも簡単に取り外され、その下のシンクにドボンする。カラカラと控えめに開けられたキッチンの窓からは逆光で光る鼻眼鏡だけが不気味に浮かび上がっていた。  ビシッ! ビシッ!  間髪入れず八雲の放ったテーザー銃のワイヤー針が2本、鼻眼鏡目掛けて一直線に放たれた。  軌道は完璧。  パリパリと数十万ボルトの電流が流れた音に続き、シンクになだれ落ちた鼻眼鏡を視認すると、2人は勢いよく立ち上がり一目散に駆け寄った。 「「Cazzo(畜生)!!」」  良い子は絶対に使っちゃダメなパロラッチャ(イタリア流汚いお言葉)が2人の口から飛び出す。水が張られていた洗い桶の中には、地雷とワイヤー針が貫通した鼻眼鏡だけがジジジ……と情けない音を出して水没していた。  その瞬間、背後から感じる滑り気を孕んだ妙な気配。八雲とロイは眉間に皺を寄せるとゆっくりと振り返った。
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