ー 会議 ー

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ー 会議 ー

   夕方になって、緊急会議が開かれた。ランスト公の執務室には、秘書や執事ら側近に加え、俺達父子も呼ばれた。   「……酷い有り様です」  半日前とは別人のように焦燥仕切った表情で、エルマッハ隊長は項垂れた。公爵に失礼のないよう拭き取られているが、脱ぐ間を惜しんで身に付けたままの鎧には、節々に泥や血痕がこびりついている。 「生存者の救出と並行して化け物を駆逐していますが……村は壊滅的です」  テーブルに広げた村の地図に、ランスト公爵の館がある東南地区の境界線が赤くなぞられている。これが防衛の最前線なのだ。 「化け物どもは、とにかく身体の一部に喰らい付きます。かといって喰い尽くす訳ではありません」  静まり返った室内に、隊長の報告が響く。 「化け物の目的は、仲間を増やすことなのか?」  プラチナブロンドを綺麗に撫で付けた、秘書のデサロが鋭い眼差しを向ける。 「……分かりません。何せ会話が成り立ちませんから。とにかく人間を見つけると、見境なく襲ってくるのです」 「最前線は、いつまで持ちこたえそうだ?」 「とにかく、一発必中で仕留めていますが……問題は夜です。鎧で身を固めた見張りを配置していますが……防ぎ切れるか……」  歯切れが悪いのも頷ける。通常の人間相手とは勝手が違う。ひと噛みが致命傷になるのだ。暗闇に紛れて侵入されれば、喩え1体でもパニックは必至だ。
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