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「は?
ほら、男も乗ったぞ。
きみもさっさと助手席に乗れ」
ひとみは、黒塗りの乗用車の後ろをまわり助手席の方へ来ると急いでドアを開けた。
乗り込むと運転席には、既に柿沢が涼しい顔で座っておりエンジンをかけていた。
「あの、でも社長には全然関係ないことなのに尾行までしていただくのは、とても申し訳ないといいますか……」
「そんなことより早くシートベルトをしめろ。きみが心配しなくても俺にも関係なら充分あるんだ。この尾行は俺の為でもある」
「え?社長にも関係あるって、えっ、あのどのあたりがですか?」
シートベルトをしながら、ひとみは困惑の表情で柿沢を見た。
真剣な面持ちになった柿沢は、眉間に皺を刻み唇の端を噛んでいる。
カップルの乗った外車の後をつけるように柿沢の運転する車も発進した。
「きみの彼氏の今隣にいる女は
……一応、今はまだ俺の彼女だからな」
柿沢の思いもよらない言葉にひとみは心底驚いて声を上げた。
「ええ?!嘘っ!!!」
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