607人が本棚に入れています
本棚に追加
★★★
「ちょっと!運転が乱暴ですよっ、社長」
急な車線変更で横揺れする車内。
車内の座席上部についているグリップをひとみは力を入れて握った。
「文句があるのかっ、俺のせいじゃない。向こうが急な左折指示のランプを出したんだから。運転が雑だ。きみの彼氏はっ」
「そんなことないですっていうか、普段大河は、車に乗らないですし」
ハンドルを握っている柿沢の目は、前方のスポーツカーを完全にロックしていた。
獲物を捕らえたハンターのように目がギラギラと光って見える。
「だろうな。普段運転しないやつは、指示機を出すのが遅いし、車間距離も短くなったり長くなったり……スピードの緩急がおかしい。彩音は、あんな奴に自分の車を運転させて、よく平気でいられるなー」
「彩音って、では、あの女性は本当に社長の婚約者なんですか?!見間違いではなくて?」
再び高い声をあげ、ひとみは柿沢の横顔をガン見していた。
最初のコメントを投稿しよう!