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庵の声が駅構内に響く。
って、おいおいちょっとまて。
俺は周囲の視線に気づいた。
「あ、おい庵」
「なんだ! あっ……」
庵がはっと顔を上げた。周りの視線が一点に……俺たちに集約されている。
「若いっていいねえ~ほほほ」
「ほんとにねえ、ほら彼女たちを迎えに行ってあげなさいな」
「まったく、愛らしい彼女さんたちじゃないか」
「は、ははは……それはどうも」
はあああああ! もう嫌です!
「葵、行くぞ!」
俺は庵に引きずられ、周囲のにやにやした目線に見送られながら、駅の窓口に向かった。
庵は、総合窓口と書かれた部屋に飛び込んだ。俺もそれに続く。
「おい香花、お前、何してんだ!」
「ほえ?」
俺たちは眼のまえに広がる光景を見て、もう怒る気もなくしてしまった。
おてんば娘二人は、貰ったであろうお茶を飲みながら、茶菓子をほおばっているではないか。
そして、駅員さんたちと楽し気に語らっている。
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