第一章~菫、転生~

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 それから、その場が落ち着いたのは二分後だった。  俺と庵が駅員の皆さんに、深々と頭を下げる。 「皆さん、香花と菫が本当にご迷惑をおかけしました」  俺が代表して謝罪の言葉を述べると、庵が香花の綺麗な首筋をつかんだ。 「いたっ!? 何するのよ」 「ほら、お前が騒動の元凶だろ? お前も謝れよ」  香花は、駅員さんたちと庵の顔とを何度も交互に見ると、少しのあいだ口をとがらせていたが、やがてしぶしぶ頭を下げた。 「優香さん、賢治さん、皆さん、私のわがままでご迷惑をおかけしました。ごめんなさい」 「私からも、改めて……すみませんでした」  庵も香花に続いて頭を下げた。  こういうときの庵の一面は、見ていて大人だと俺は思う。たとえ自分が悪くなかったとしても、彼は昔から仲間を見捨てない。  庵が多く信頼される理由の一つがこれだろう。
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