第一章~菫、転生~

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 ……俺がこの雪華海街を愛している理由の一つが、人のつながりと温かさである。  駅員の皆さんは、顔を見合わせて微笑していたが、やがて香花が優香さんと呼んでいた女性が、優しく俺たちを見てうなずいた。 「ふふっ、庵さん、そんなに堅苦しくなさらないで。私たちは香花ちゃんと菫ちゃんのことを、少しも迷惑だなんて思っていませんよ」 「優香さん……」  香花が彼女をもう一度見ると、優香さんだけでなく、駅員の皆さんが笑顔でうなずいてくれた。 「ああ、むしろ楽しい時間だったよ」 「皆さん……ありがとうございます」  庵も、今度は笑顔で礼として頭を下げた。いや庵も、香花と菫が歓迎されていたことは分かっていただろう。  この街は何よりも人の繋がりを……笑顔を大切にする街なのだから。  それから俺たちは、駅員の皆さんに改めてお礼を残し、駅員室を後にした。
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