第一章~菫、転生~

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「うわっ! ど、どうしたんだよ菫」  菫は少し恥ずかしそうな顔をしている。 「あ、葵、ついて来いじゃないでしょ? ちゃんと手を引いて連れて行ってくれなきゃ」  菫は自分で言っておきながら恥ずかしかったようだ。  顔を真っ赤にして、もじもじしている。  口には出さないが、こういう菫も俺にとって凄まじい破壊力だ。 「っ! しょ、しょうがねえなあ、ほらよ」  俺は恥ずかしさを誤魔化すために頭をかき、菫の手を引いてやった。ああまったく、これが愛おしくてたまらないという感覚なのだろうか。 「香花、ほらよ」 「えっ?」 「手かせよ、お前こそ捕まえてないと、また面倒起こすだろ」  庵はそう言うと、ふんっと言わんばかりの顔で香花の手をしっかりと握った。これには香花も、完全に先手を打たれたという感じだ。  俺が変わっていくと自覚する一方で、庵もまた随分と変わった。  俺は最近そう感じる事がしょっちゅうだ。人は恋をすることで変わる。それに相違はなかった。    
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