第一章~菫、転生~

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「……庵、ずるい! わ、私が先に言う予定だったのに!」  香花はむっとして庵を見上げたが、すぐに庵の手をぎゅっと握りなおした。 「……でも、すっごく嬉しかった! ありがとう」 「やめろよ……恥ずかしいだろ」  なるほど、割と本気で照れている庵はなかなか珍しいな。俺はその思いを、そっと微笑の中に隠すのであった。  俺たちはそれぞれ手をしっかりとつなぎ直し、改めて大切な人と笑顔を交わし合った。 「いいわねえ~、恋って」 「ほほほほ、ほんとねえ、若いって素晴らしい!」  俺たちは、はっとして周囲を見回した。だがもう遅い。ギャラリーたちは一部始終を見ていたようだ。 「ふえっ!? ひゃあ~! は、恥ずかしいよお~」 「お、俺としたことが、周りが見えていなかっただと~!」  駅前の道に、香花と庵の悲鳴が響き渡った。俺と菫は恥ずかしさで動けない。 恋をすると周りが見えなくなるということを、俺たちは身をもって経験したのである。
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