プロローグ~ウソのようなホントの話~

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「ふっ、何を言う。これが俺というものだ」 「まあ確かにな」  俺はため息交じりに微笑して振り返った。  そこで不敵な笑みを浮かべている男は、神沢(かみさわ) (いおり)という。俺の旧知で、物心ついたころから長い時をともにしてきた。  ときどき日本語が訳わからなくなったり、一人でおかしなことを口走っていたりするが、頭が切れるのは間違いない。学校でも人望厚く、一年二年とクラスの委員長を務めていた。 「なんだよ、香花は一緒じゃないのか?」 「ああ、いつも通りさっきまで寝ていたぞ。俺が家を出る頃あいつが寝坊した悲鳴が聞こえていたから、もうすぐ来るだろう。菫もまだか」 「そうだな」    その時、高神公園に馬車の音と馬の鳴き声が響いた。
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