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その時、まるで俺たちを救うかのような話声が聞こえてきた。
どうやら遊園地の正門付近からのようで、大勢の声が聞こえる。
話の内容からして、大家族で遊びに来ているようだ。
「しまった、どうする?」
まず聞こえてきたのは、お父様らしい男性の慌てふためくような声。
「ちょっとあなた! お弁当を車に積み忘れたってどういうことよ」
「ねえ、お父さん、お弁当ないの?」
「う、すまない」
「ねえ~来たばっかりなのに」
俺たちは全身を耳にしてその会話を聞いており、途中まで聞いたところで誰言うことなく立ち上がっていた。
俺たちの両手には、大量の食料がある。
「あ、あの、すみません!」
「はい? あなたたちは……」
香花が切り出すと、一家のお母様らしき女性が少し驚いたように首を傾げた。
「皆さんの、さっきの会話を聞いてしまって……あの、お節介が過ぎるとは思いますけど、よろしかったらこれ、貰ってくれませんか?」
「はい?」
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