第二章~香花、絶叫~

1/32
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ

第二章~香花、絶叫~

 俺たちは、周囲の人々が放つ、異様なものを見るような目線を浴びながら、葉室さんの馬車に乗り込んだ。 「ちょっと明日真! どうして街中まで馬車で迎えに来るのよお~」  菫が恥ずかしそうに葉室さんに抗議している。確かに、これは少しばかり恥ずかしい。 「皆さま、そろそろ出発いたしますが、お忘れ物はございませんね」  葉室さんが長麗な髪を風に翻して俺達に確認を取った。香花が声を上げたのは、その時である。 「う、うそ!? な、ない。ないわ!」 「香花? どうした、なにか忘れ物か?」  俺が聞くと、全員が香花を見つめた。彼女の顔つきからして、何やら大切なものでもなくしたような感じだ。 「どうしよう、スマホがないんだけど!」 「はあ!?」    庵が思わずひと際大きな声を出した時、空は少しずつ茜色に染まりつつあった。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!