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第二章~香花、絶叫~
俺たちは、周囲の人々が放つ、異様なものを見るような目線を浴びながら、葉室さんの馬車に乗り込んだ。
「ちょっと明日真! どうして街中まで馬車で迎えに来るのよお~」
菫が恥ずかしそうに葉室さんに抗議している。確かに、これは少しばかり恥ずかしい。
「皆さま、そろそろ出発いたしますが、お忘れ物はございませんね」
葉室さんが長麗な髪を風に翻して俺達に確認を取った。香花が声を上げたのは、その時である。
「う、うそ!? な、ない。ないわ!」
「香花? どうした、なにか忘れ物か?」
俺が聞くと、全員が香花を見つめた。彼女の顔つきからして、何やら大切なものでもなくしたような感じだ。
「どうしよう、スマホがないんだけど!」
「はあ!?」
庵が思わずひと際大きな声を出した時、空は少しずつ茜色に染まりつつあった。
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