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「あ、あれ? 明日真?」
菫が、辺りをきょろきょろしながら執事の名を呼んだ。遊園地の出口で待っているはずの葉室さんがいないではないか。
「ねえ、菫ちゃん。馬車を引いていた馬って、二頭だっけ?」
香花が覚えた違和感は正しかった。どうやら葉室さんは、途中で我慢の限界を迎えて馬で遊園地に入っていったようだ。
俺たち四人は、馬車を前にして首をかしげていた。広範囲を歩き回ったと言うのに、誰一人葉室さんとすれ違っていないのだ。
「おかしいわね、葉室さんほどの存在感なら気付いてもおかしくないと思うな」
香花の言う通りだ。彼単体でも目立つのに、馬で駆けまわっているのなら、騒ぎの一つでも起きて良いはずだ。
その時、遊園地の方から大勢の女性の叫び声が聞こえてきた。
俺達は顔を見合わせ、うなずいて遊園地に戻り、思わず面食らってしまった。
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