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「ああ、皆さま! 香花さまのスマートフォンは見つかったようですね。それは重畳でございます」
「あすまあ~っ! 何してるの! 早くそこから降りて!」
なんと葉室さんは、白馬をみごとに操ってジェットコースターのコース上を駆けめぐり、上空から探していたようだ。
確かに葉室さんの視力なら不可能ではないだろうが、こればかりは菫に同情してしまう。
そのおかしなイケメンは、周囲は気にせず夕日をバックにコース上から手を振っている。
馬の背が似合いすぎる古風な風格と、風になびく衣装と髪。
その姿は周囲の女性陣にとどまらず、馬鹿執事を注意するためにやってきた係の人や警備員まで虜にしてしまっている。
葉室さんは手綱をあやつり、俺たちの目の前に降りてきた。
まっさきに駆けよった菫が、怒りながら葉室さんをぽかぽか叩いている。
「もうっ、目立たないでってあれだけ言ったじゃない!」
「これはこれは、申し訳ございませぬ、菫さま。私も、目立つつもりは無かったのですが……」
菫をのぞく俺たち三人は、もはや言葉も出てこなかった。
この世に完璧な人間はいない。恐らく、葉室さんはあれくらいで丁度いいのだろう。
俺は自分の中でそう思い落とすことにした。
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