第二章~香花、絶叫~

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 街の大型スーパーについた俺たちは、手分けして買い物をすませた。  買ったものは今夜の食材だ。菫の家、つまり槐家の屋敷には広い中庭があり、そこでバーベキューをするのである。    しかし、あるいみ予想どおりカオスな買い物だった。    菫は俺たちと金銭感覚がけた違いにずれているので、肉にしろ野菜にしろ、無自覚で高級なものばかり買い物かごに入れるのだ。  まあ今回は菫の祖母、静香さんの計らいで、お泊り会の費用はすべて槐家が出してくれるというので、まあそこは良しとしよう。    しかし香花と菫は案の定、菓子に目がくらんでしまうのだった。  俺と庵がうっかり目を離したすきに、買い物かごは多種多様なお菓子の山である。 「おい二人とも! これはなんなんだ!」 「なにって、見てのとおりお菓子よ、庵」 「はあ、これはだめだ」  庵の口から、大きなため息と苦笑がもれた。  そして葉室さんは葉室さんで、姿が見えないと思えば、やはり女性陣に取り囲まれて身動きできない状態になっている。 「葉室さん! なにしているんですか、女性たちに流されないでください」 「いやあ、申し訳ございません、葵さま。私、お恥ずかしいことながら、女性の扱いは不慣れでして……しかし、彼女たちをぶっきらぼうに追い返すわけにもいかないでしょう?」  葉室さんの、どこか子どものような輝く瞳に、俺は言葉を失った。
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