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「皆さま、大変長らくお待たせいたしました。到着でございます。どうぞお出ましを」
「ありがとう、葉室さん!」
香花がまず葉室さんにお礼を言って馬車を降り、俺達も後に続いた。そこは、俺達にとって懐かしい場所、槐の屋敷である。
「おお、これは……」
最初に感嘆の声を上げたのは庵だった。俺と香花も、思わず目を輝かせずにはいられない。明かりの灯った槐家は初めて見たのだが、これがまた何とも言えない存在だったのだ。
屋敷には、美しいともいえる優しい明かりが灯り、広大な庭や、馬小屋を穏やかに照らす庭園灯も、まるで現代ではないようだ。
それに加えて、屋敷の後ろにそびえたつ槐山が満月の美しい月光に優しく照らされ、夜空の満月は庭にある池にその姿を映しているのだ。
その様子は、まるで平安時代の貴族の屋敷が、時を越えて現代に現れたと言っても過言ではない雰囲気だった。
「す、すごいね菫ちゃん」
「そう、ありがと、香花! さあ、行きましょう。もうきっとみんな来ているわ」
「そうね」
俺達は菫に案内され、槐の屋敷へと入っていった。
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