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菫は男として生まれたが、去年の夏一族の呪いで命を落とした。
しかし彼……もとい、彼女自身の強い思いと、呪いを生み出した張本人たちである一族の初代と三代目の偉大な力。そして、一人の少女の強い思い。
全てが時計の歯車のように噛み合い、一つになることで、菫は女の子としてこの世に転生した。
うそのような本当の話。しかし、そのおかげで、俺たちは今ここにある。
菫は、日を増すごとにより女の子っぽくなっていた。
最初は、男だったころの名残で、自分のことを「ぼく」と呼んでは恥ずかしそうに顔をおおっていたが、最近はそれもなく、仕草も女の子のものになっている。
「あれ? ねえ二人とも、香花はまだなの?」
「ああ、まあもう来るだろ」
庵がそう言ったとき、まるで合わせたかのようなタイミングで香花がやってきた。
「みんなあ~っ、遅れてごめんね」
そういって俺たちに駆けより、息を整える黒髪の少女。
長い黒髪と、温かな笑みが特徴の彼女が柴丁 香花。俺にとっては幼馴染で、庵にとっては彼女という存在。
俺はいま、庵、香花、菫とともに、この街でかけがえのない日々を送っている。
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