第二章~香花、絶叫~

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 そこはまさに時代が違っていた。  おとぎ話や日本史の資料集なんかに出てきそうな場所である。 「広さは……テニスコートくらいはありそうだよな」  庵のいうとおり、いやもしかするとそれ以上かもしれない。  その広大な空間には、四季折々の木々が美しく配置され、また中庭の大きな池には満月が映っている。  そしてその中心部には、木製のテーブルと椅子、それにバーベキュー用の大きなコンロが置かれていた。 「皆さま、どうかなさいましたか? さあこちらへどうぞ」 「そ、そうですね。では失礼して」  俺、兄貴、庵の三人は、辺りを見回しながら葉室さんと香澄の後に続いた。  中庭はきれいな砂利(じゃり)が敷き詰められており、月光に輝く砂たちが歩くたびに音を立てた。  バーベキューコンロのある場所までやってきた俺たちだが、俺は今の条件ではバーベキューが困難であることに気付いた。 「葉室さん、確かにここは幻想的で綺麗ですけど、この暗さじゃバーベキューは無理ではないですか」 「確かに……そうだな」  俺のひとことで庵も暗い夜空を見上げた。  周囲に点在する石灯ろうの優しい明かりだけでは危険であろう。  葉室さんは俺たちにうなずいて見せた。 「さすがは葵さま、庵さまでございますね、そのとおりです。ですがご安心を。今宵のためにしっかりと準備は整えております」  葉室さんが、いつのまにやら取り出した小さなボタンを押すと、中庭が強い明かりに照らし出された。  闇に慣れた目がいっしゅん眩む。 「葉室さん、こ、この光は……」
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