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葉室さんはうなずきながら説明してくれた。
「ええ、この日のために、いえ、今後も活用できると考えて特注した屋外夜間用の照明です。この明るさであればバーベキューは問題ないでしょう」
確かにその通りだ。しかし、一台でもかなり強力な照明が、中庭を囲むようにして屋敷に四台も設置されている。さてはて、いくら使ったのだろうか。俺はそれは気にしないようにして、炭の火おこしを手伝った。
「なんと皆様、なかなかに火の扱いに慣れていらっしゃるようでございますな」
「はい、一応は」
俺は少し得意になって答えた。先程庵が言っていた通り、我が天竺家と柴丁家、神沢家は昔からアウトドアを三家合同で楽しむことがある。バーベキューをすれば、いつも火おこし担当は男組の仕事だったのだ。それもあって俺達は、比較的円滑に火付け作業を進めることができた。
バーベキューコンロは四台ほどあったが、ほどなくして全てのコンロに火が点けられて安定した。ほのかに紅く燃える火は夜に輝いて美しく、また炭火の香ばしいにおいが庭に広がった。何とも懐かしい感覚である。
それから食器などの準備も整い、いよいよ食材の登場を待つのみとなった。香澄が笑顔で俺達に近づく。
「いやあ~、お二人ともすごいですね! ずいぶんと慣れているみたいで」
香澄はこう言った催しはあまり経験してこなかったのだろうか。目を輝かせて俺達を讃えている。そして敢えて言うが、やはりその笑顔も何度見ても慣れぬものであった。
「い、いや、それほどでもないぞ」
「う、うむ、そうだ」
俺達はぎこちなく答えた。まったく、葉室さんといい、菫や香澄といい、槐家に関わる者の魅力はいつも見る者を混乱させる。
「うひゃあ~!」
突然程よい静けさを破り、屋敷の中から聞こえてきた悲鳴はおそらく香花のものであろう。その直後、凄まじい物音が響いた。俺と庵が思わず苦笑する。
「どうやら、もう少しかかりそうですな」
俺達は葉室さんの言葉に思わずにこやかな顔を見せあい、夜空の元でうなずくのだった。
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