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しかし、それで痛いめに遭うのはなぜ俺なのだろうか。そこだけがよく分からない。
「お姉ちゃん、いい加減諦めてよお~」
「や~だあ~」
菫、お前は子どもか。俺がそう言おうとした時だった。二人の手が滑り、引っ張られていた肉が解放されたために空を舞い、それは空中で数回転してから俺の顔面に華麗な着地を決めたのである。焼きたての肉は当然熱い。
「!? あっつ~!?」
俺の悲鳴が中庭にこだました。それを最も間近で見ていた槐姉弟が大慌てで俺に駆け寄る。
「あ、葵、大丈夫!?」
「ご、ごめんなさい葵さん!」
「あ、ああ大丈夫だ」
俺の犠牲を持ってひとまず騒動は落ち着いた。
それからしばらくの間、カオスには変わりないのだが、一応最初よりは落ち着いた時間が流れた。それぞれ皆が徐々に打ち解けていくと、普段の繋がりを越えて和気あいあいとした雰囲気が空間を彩る。
俺達は菫と香澄により互いを紹介され、葉室さんに仕える七人の巫女さんたちとも交流を深めた。
彼女たちは皆葉室の名を持ち、姉妹や親せき関係にある七人だそうだ。
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