15人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
俺たちは、まだつぼみだが、確実に迫る開花の時を待つ桜たちの下を小走りに下っていた。
べつに急ぐことはないが、百メートルの断崖をかなりの斜度で下るので、この道を通るとどうしても小走りになる。
歩行者専用のこの道は、四人だと横一直線になって進むことはできない。俺と庵が前を行き、俺たちの後ろを女子二人がてけてけと付いてくる。
「今夜は楽しみね、やっと私の大望が叶うんだもん!」
とつぜん笑顔でそう言った香花に、菫は苦笑して答えた。
「香花ってば大げさね。そんなに私の家に泊まりたいの?」
「もっちろんよ、菫ちゃん!」
女子二人のいう通り、俺たちは今夜、槐家でお泊り会をする。
そのため俺たちは、街へ遊びに行くついでに、今夜の食糧調達に行くのだった。
確かに菫の屋敷に行けるので、俺も少しは心が高ぶっている。
「まあ、夜の楽しみはその時まで置いておくとしようじゃないか。今日は一日楽しむぞ!」
庵のはりきった声に、俺たちは歓喜の声をあげた。桜並木通りは終わりを告げ、俺たちの眼前には雪華海街西口駅がある。
今日の第一目的地は、街の中心部にある遊園地だった。俺たちの一日が始まる。
最初のコメントを投稿しよう!