第一章~菫、転生~

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 時刻は午前十時半。雪華海街西口駅を出発してから十五分が経っていた。  まもなく俺たちを乗せたレトロな四両編成の電車は、この街の中心部、雪華海街中央駅に到着する。 「そう言えば菫ちゃんって、街の中心部に来るのは初めてだったっけ?」 「そうだよ香花。だからとっても楽しみだったんだ」  菫が瞳を輝かせて言ったとき、電車は完全に停車した。 「よし、行くぞ」  庵の掛け声で、俺たちは賑やかな街へ飛び出した。  だが、その直後。 「……おい、庵」 「……なんだ、葵」 「なんであの二人はいつもこうなんだ!」  俺は人ごみの中であるにも関わらず、思わず叫んでしまった。電車を降りて早々、おてんば娘ふたりが見当たらないのである。  今日は休日であり、田舎町とはいえここは街の中心部だ。  駅は人がごった返している。俺と庵は、あらかじめ電車を降りる前に、俺たちについてくるよう言い聞かせていたのに、雑踏(ざっとう)を抜けて振り返ってみると、二人の姿はなかった。
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