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プロローグ~ウソのようなホントの話~
俺の名は天竺 葵。
周囲を険しい山々に囲まれた、この雪華海街に生まれ育った高校三年。
今日は三月二十五日。俺は昔からよく遊んできた「高神公園」の東屋に座り、そこから町を見下ろしていた。
時刻はもう間もなく朝の九時を迎えようというところだ。まだ街を吹き抜ける風は冷たく、俺の身を震えあがらせるが、春の訪れを感じる今日この頃である。
俺が何をしているかというと、それは待ち合わせだ。大切な人たちとの待ち合わせは、いつも決まってこの公園だった。
「う~っ、しっかしまだ寒いな~」
俺はまだ冷たい風に思わず身を縮めた。俺は犬と寒さが大の苦手である。
その時、俺は背後から声をかけられた。落ち着いたような、それでいてどこかの王のような不敵な感じ。
「ほう、今日は葵が一番乗りとは、雨でも降るのか」
「おい、庵。お前のその性格は治らないのか!」
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