伯父との学習

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伯父との学習

 まったくなんてこった。中1から僕(僕の名は清水直人という)は毎週土曜の午後、久我山にある母の兄、つまり伯父のもとへ英語を習いに行くことになった。  カオル伯父。漢字はない。カタカナ表記だ。戦時中の生まれだから珍しかったろう。おまけに男女どちらかもわからないカオルという名前。  カオル伯父は都内の医大で英文学・哲学の教授をしている。久我山の分譲マンションで奥さんの久美さんと僕より5歳下の息子の健君、その下に恵ちゃんというごく普通の家族暮らし。  貴重な休みの午後をなぜか、カオル伯父はあまたいる甥っ子姪っ子の中で、僕を指名し、英語を教授するという。なぜ僕だけが寵愛される羽目になったかは分からなかった。
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