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俺、一宮 樹生徒会長を務めるのは、水森宮(みずのもりみや)学園という。初等部から中等部、高等部、大学部まである一貫校である。
初等部、中等部は各学年3クラスとあまり規模が大きくないが、高等部からは規模が大きくなり、男子校と女子校と分かれ、敷地も違う場所にある。各学年理数科4クラス、普通科4クラス合計で8クラスまである。
大学部も、教育学部、経済学部、外国語学部、文学部、理工学部、農学部、医学部、薬学部など幅広い教育がされている。
とはいえ、全てが同じ敷地内にあるわけではない。
初等部と中等部は同じ敷地にあるが、高等部はそこから自転車で30分程度離れたところにあり、寮は歩いて5分程度の距離にある。寮の裏手には学校保有の山があり、運動部の生徒のいい練習場所になっているようだ。
因みに、系列の女子校も初等部、中等部と同じくらい離れた場所にあるが、うちの学校からは自転車で1時間以上かかる場所にある。
大学は理数系と文系で敷地が分かれている。やはり自転車で30分程度の距離にあり、こちらは海に近いところにある。
俺たちが通っている高等部は文武両道を謳っている学校で、学業にも、スポーツにも力を入れている学校だ。とはいえ、どうしても理数科と普通科で文武が分かれてしまうのだが。
現在、生徒会に在籍しているのは4人で、
生徒会長は俺、一宮 樹(いちのみや いつき)、
副会長は百瀬 葵(ももせ あおい)、
会計は会計の木下 駿(きのした しゅん)、
庶務は岩永 清一郎(いわなが せいいちろう)だ。
書記はいない。
書記は生徒会長のフォローもしてもらうのだが、選定がなかなか進まなかった。
因みに、庶務は副会長のフォロー役も兼ねている。
基本的に、生徒会長は選挙で決まるが、それ以外の役員は自薦、他薦問わず立候補制だ。しかし、書記の立候補がものすごく多かったのだ。
一つの書記の枠に100人以上の手が上がり、ふるい落としに時間がかかってしまったのだ。
主に俺のフォローをしてくれる人間で、俺に仕事に支障をきたしそうな感情を持っていない人間を省いていったら季節が過ぎ、学年が代わってしまった。この新歓が終わったらやっと数名に絞った中から選ばなくてはいけない。
岩永は基本、百瀬のフォローをしていて、時折俺のフォローにも回ってくれるのだが、あまり岩永を拘束すると百瀬の機嫌が悪くなるのであまり色々なことは頼めない。この後、体育祭や文化祭など大きな行事があるため、1人欠員が出ている状態で生徒会を進めるのは難しくなってくるだろう。
一つ上の幼馴染の百瀬と岩永は高等部3年理数科1組で、寮生の二人はルームメイトでもある。
この二人は元々家同士の付き合いがあり、幼稚園に入る前から知り合いだったと聞いている。百瀬はある大企業の三男坊で、ご両親が思いがけず恵まれた3人目だったらしく、ご両親はもちろん年の離れた兄達からも溺愛されているらしい。
クリクリとした大きめな目、ぷっくりと柔らかそうな唇、ふんわりとカールした少し茶色の髪の毛。その容姿で、いつもニコニコとしている様子から学園の天使ともささやかれている。
だが、そこそこ長い付き合いの俺は、中身はメンドくさがりなそこらの高校生男子と変わらないことを知っている。
岩永は身長180㎝を超える長身で、顔も少し厳ついが、話をすると温厚な人柄ということはわか。
だが、黙って165㎝程度の百瀬と並んでいる姿は天使と悪魔、美女(美少女?)と野獣、赤ずきんと狼などひどい言われようである。
彼の父は百瀬の父の秘書で彼の祖父も百瀬の祖父の秘書で、と代々百瀬の家に仕えているらしい。百瀬の兄達にも岩永の兄や従兄弟が秘書としてついているそうだ。
一度、百瀬が席を外しているときに、将来が決まっていることに不満はないのか聞いてみたことがある。
「以前は悩んだこともある。でももう腹はくくっている。今はどうしたら葵と居られるか毎日考えている。」
未来を見据える目に、何が写っているのか俺にはわからなかったが、岩永が納得しているなら友人として応援すると伝えると、
「ありがとう」
と微笑んだ。
びっくりするくらいきれいに笑ったので瞬間言葉を失ったのだが、そこで百瀬が戻ってきたためその話はそこで打ち切りになった。
なんとなく、簡単に触れてもいい話ではないことが察せられた。
俺と会計の木下は、クラスメイトで高等部2年理数科1組に在籍している。木下は高等部からの外部生で、俺と百瀬、岩永は小学部からの持ち上がりだった。小学部から中学部への持ち上がりは多いが、全員ではない。一応受験があり、基準に満たないものは中学部への進学はできない。高等部への進学も同じである。
高等部からは寮もあるため、県外出身の生徒も増えてくる。クラスの半分くらいは外部生で、内部生も実家からより近い敷地内の寮を使うものもいて、俺や百瀬、岩永もそう。
木下は外部生の一人で、東北の出身だと聞いた。人当たりも良いため、生徒会の仕事中にもよく呼び出されているが、告白を受けた、という話は聞かない。
俺たちの今の仕事は、来週に控えた新入生歓迎会というイベントを成功させること。歓迎会といっても、メインは部活動紹介となっていて、現在紹介のトリを飾る部活をサッカー部とバスケ部で争っている。どちらも全国大会に手がとどく強豪であるため、身体能力の高い新入生を狙っているのだ。
気持ちは分かるがいい加減にしてくれ、というのが今の俺の心情でもある。
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