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「あんた!?あんたがやったんじゃないでしょうね、空!?」
「な、な、何で僕!?知らないよ、こんなことして何の得があるんだよ!?」
「怪しげなおまじないとか昔から好きだったじゃないの!何よこの悪趣味すぎるサプライズ!ふざけてるわけ!?」
「だから、知らないってば!」
何で自分が疑われるのか、全く意味がわからない。胸倉に掴みかかられ、必死で首を振る空を見かねてか、おろおろしつつも勇雄が仲裁に入ってくれた。
「お、落ち着けって清香!やってないって言ってるだろ!?確かに空は昔、おまじないとか好きだったけど……こいつが中に入れたものまで壊されてるんだぞ。実際、メリットなんかない、そうだろ!?」
己の金魚の糞だった男に言われて、彼女は渋々僕の服から手を離した。Tシャツの胸元が明らかに伸びてしまっている。女の子だけど結構力持ち、は相変わらずだな――と思いつつも黙っておいた。ここで火に油を注ぐほど、空も馬鹿ではないのだ。
「……気持ちは、わからないでもないよ清香。タイムカプセル埋める話は、私達だけでしたことだし……私達しか、埋めたことは知らないはずだし」
でも、と続ける希美。
「私達しか出来ないなんて、そんなことはないと思う。卒業式の後に埋めに来たけど、それを誰かが見てたってことも十分あるし。私達に恨みがある誰かが、こういうことをしたってこともあると思うし……」
「恨みって、何よ。私、恨まれる覚えなんかないんだけど」
「逆恨みってのは誰にでもあるし、それに恨みがなくても悪戯ってことはあるんだから。とりあえず落ち着こうよ、清香」
希美にまでそう言われてしまえば、いくら思い込んだら一直線タイプの清香も刃を引っ込めるしかない。大体、と空は思う。仲間を疑うつもりはないが、何故“疑うなら空に違いない”になるのだろうか。おまじないが好きだったから、それが何だというのだろう。確かに魔術とかまじないの類には、こういう血のようなものを使ったものが存在するのは確かだけれど――これじゃあまるで、本当に誰かを呪い殺そうとでもしているようではないか。
確かに自分は、タイムカプセルに何かのおまじないをした記憶はある。ただそれは、希美がカプセルを発動させたら両思いになれる!というものであったはずだ。結局カプセルを開けたのは勇雄だったわけで、まじないそのものが意味を成さなくなったはずである。正直、関係があるとは到底思えない。
普通に考えて、誰かの悪趣味な悪戯と考える方が余程自然ではないか。希美が言う通り、カプセルを埋める計画を立てたのは四人だけであっても、その様子を誰かが見ていた可能性は十分に考えられるのだから。
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